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コーヒー試飲専門店「Cottea」からのお知らせページです。

コーヒーのある日常 #2「ゆるやかな空とピクニック」with Cottea No.120

コーヒーのある日常 #2「ゆるやかな空とピクニック」
 

「ねえ、浩平、この辺にしようか」

土曜日の冬の朝。まだ太陽で温まりきっていない、近所の公園。シオリは立ち止まった。

そして、俺のリュックからビニールシートを取り出して、手際よく敷き、自分のリュックを下ろしてあぐらをかいて座る。

その様子をぼんやりと見ている俺を見て、彼女は「座りなよ」と、シートの上をぽんぽんと、叩いた。

促されるままに座る。と、地面のひんやりとした感触が臀部に伝わってきた。

公園の時計を見る。まだ朝9時だ。俺は大きくあくびをして、こんな朝早くに「ピクニック」なんかに来てしまったことを、再び猛烈に後悔した。

 
 
仕事という物は、どうしてこうも集中して降ってくるのだろうか。

ここ2週間、とにかく忙しかった。帰りはほぼ終電で、土日もほとんどなく働いていた。

お陰さまで、俺は肉体的にも精神的にも、疲弊しきっていた。

そんな仕事の山が、昨日ようやく一段落。ちょうど金曜日だったのでものすごくウキウキしながら家に帰った。「明日は土曜日だ。一日中寝てやるぞ!」と、最高に幸福なプランニングをしながら。

 

「え、仕事落ち着いたの?お疲れさま。じゃあ、明日はピクニック行こう。」

しかし、家で待っていたシオリのとんでもない一言が全てを変えた。

「ピクニック?」

「朝、早く起きて、二人でお弁当作って、外で食べるの」

「いや、めっちゃ疲れてるから、寝たい」

「大丈夫だよ」

なにが大丈夫なのかよくわからない。なぜ、休みの日なのに早起きなんかしなければいけないんだ。

結局、その夜は、ピクニックに行きたいというシオリと、寝たいという俺の意見は平行線をたどり続けた。同棲して半年にもなるからよく知っている。シオリは、こういう事は一度言い出したら聞かないのだ。

 

案の定、翌朝は問答無用に朝七時に起こされた。

 

俺は文句をぶつぶつと言いながらも、シオリに尻を叩かれ、サンドイッチを作った。彼女はその間、テキパキとコーヒーを淹れて魔法瓶に移し、ビニールシートを準備した。

「お弁当と、コーヒーと、ビニールシート。おっけー?」

「持ったよ」

「さ、行こう」

「そういえば、ピクニックの場所は?どこ行くの?」

「南公園だよ」

「……え?」

南公園というのは、家から徒歩五分の所にある、少し大きめの自然公園だった。

なぜ、歩いて五分のところにある公園に、わざわざ「ピクニック」をしに行かなければいけないんだ?

彼女に言うと、さも当たり前のように

「え、近い方が楽でしょ。浩平疲れてるんだから、遠出じゃない方がいいと思って」

……違う、そうじゃない。

 
 

彼女はシートの上で「朝ってやっぱり気持ちいいね。空気が新しい気がする」なんて事をいいながらストレッチをしている。

休日の朝9時。いつもなら確実に寝ている時間だ。おまけに、昨日までの疲労も抜けきれていなかった。眠い……。

俺は、ビニールシートの上で仰向けになった。地面はデコボコしていて、布団の中ほど快適ではなかった。

……まあ、それでもいい。回復が最優先だ。このまま眠ってしまおう。

「あ、それいいね」

彼女は、俺の気も知らず、うきうきした声でそう言うと同じように仰向けになった。

 

「ねえ、空、いい感じ」

俺が目を閉じようとしたとき、彼女が手を繋いできて、そう言った。

「ここ数日死にそうな顔してたよね」

「仕事ホント大変だったんだって」

「ゆっくりする時間も必要だよ」

「うん、まあ、けど、ゆっくりするなら、家で寝てた方がよかったな……」

「自分がゆっくりしてる時間を過ごしてるかどうかなんて、寝てたら分からないでしょ」

ちょっぴり強引な理論だ。けれど、寝転がって、風のそよぐ音に耳を傾けていると、なんとなく、それは正しいようにも思えた。

 

俺は、視界に入ってくる空を改めて捉え直す。

綺麗に晴れていて清々しい。冬の澄んだ水色の空間に、雲が所々に浮かんでいる。

雲達は、自分が日々生きている日常の時間軸よりも、もっとゆっくりな時空に存在しているように見えた。

朝の空を、こんなにじっくり見たのなんていつぶりだろうか。

シオリが深呼吸をしたので、俺も、雲の浮かぶ時空を肺から取り込むように、ゆっくりと、深呼吸をした。

二人は、しばし、無言で空を眺めていた。

 
 

「ねえ、コーヒー飲む?」

突然、彼女はがばっと起き上がり、リュックの中から水筒とカップを取り出した。

俺は起き上がってカップを受け取る。

目を閉じて、ゆっくりと一口飲んだ。

ほのかに甘いコーヒーの味が、自分の中に流れる時間のスピードをゆるやかにしていく。

「これ、今日のために買ってきたんだよね」

「そうなの?」

「うん。なんか、ゆっくりしたいときって、こういう味の方がいいなって思った」

「……さすがです」

 

俺は、カップを置いて、一つ、伸びをした。

朝。ゆるやかな休日はまだ始まったばかりだ。

 

 
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